二杯目の生ビールを飲み終えた後、
H田氏が、「藤田さん、そろそろ日本酒にしましょう」と私にそう言った。
あぁいいですね、そうしましょう。何飲みますか?
と、私は直ぐに相槌を打った。
私は、H田氏が飲みたい日本酒と同じものを注文しようと思った。
「そうですね。じゃあ、『越乃景虎』を飲みましょう」と、ちょっと遠慮がちに、私に言った。
いいですね。じゃぁそうしましょう。
私はそう言って、一緒に飲んでいる女性陣二人の飲み物が空になっているのを確認し、次は何を飲みますか?と声をかけた。
その一人のKさんが、「そちらは何を飲むんですか?」と逆に尋ねてきたので、
私たちは、日本酒の「景虎」を飲みます、と簡潔に応えた。
するとKさんは、「確か、『あぶさん』の長男って『景虎』って言うんですよね?」
と、女性にもかかわらず、いきなり野球マンガネタかよ、と言う意表をつかれた鋭いインコースの会話を投げ掛けられた。
私とH田氏は、そのKさんの意外な返答に、「おっ?」と虚を衝かれた。
しかし恐らく、聡明な彼女は、今までの会話の流れで、私が新潟からやって来たという事や、同席のH田さんも仕事で新潟に何年か住んでいたという事を知って、気を使って、同じく新潟出身の水島新司先生のネタを振ってきたんだろうな、と私もH田氏も感じた。
「あたし、実は仕事の都合で福岡に何年か住んでいた事があるんですよ。
福岡と言えば、やっぱりホークスなんですよね。
その時、あぶさんは、福岡ダイエーホークスだったんですよね。
今はソフトバンクっていうでしたっけ?
あたし、マンガは割と好きだから、福岡にいた頃、結構読んでたんですよね」
と、Kさんは話を続けた。
私は、ならばと思い、じゃぁ、そこに登場する「今井雄太郎」って知ってる?
と尋ねたら、
「誰ですか?それ?」
と、急に醒めた返事をされてしまった。
私は、あぶさんの子供の名前まで知っているのだから、当然、今井雄太郎の事も、
「知ってる、知ってる」と応えてくれるものだと思っていたのに、急に醒めた態度をされたので、
今井雄太郎はね、新潟の見附市というところの出身でね、ねぇ見附って長岡の隣のところなんだけどね。そいでね、阪急ブレーブスにいてね、酒を飲んでマウンドに上がってね、完全試合をね・・・・、などなどと、我が郷土のヒーローについて話を弾ませるつもりだったのに、
とっさのことだったので、私も焦ってしまい、思わず、
えっ?あの今井雄太郎、知らないの?ホントに?
あのね、今井雄太郎っていうのはね、
今井雄太郎っていうのはね、
あぶさんのね、「飲み友達」なんですよ。
と、いきなりオチを言ってしまい、ほとんど、なぎら健壱状態になってしまった。
Kさんも「だから、それ誰?」
としか受け答えができなかった。
急に場が白けてしまったの察したH田氏がすばやく「確か阪急で完全試合をした・・」と話をつなげ、
私は、そうそう、そうなんですよ、ひたすらに相槌を打ち続けた。
Kさんは「へぇ~、そうなんですかぁ。初めて知りました~。」と妙に感心していた。
話の区切りがついたので、じゃぁ、そういう事で、Kさんも「景虎」でいいですか?
と聞いたら、
「私は、芋焼酎。」
今までの話は、一体何だったんだろうか?
と思いつつ、何事も無かったかのように、私とH田氏は越乃景虎を飲んだのだった。
越乃景虎「ひやおろし」
1.8L¥2,730
720ml¥1,365
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