夏の自由研究(7)
飼育ケースのあるところは、敢えて電気を消し暗くしている。
私は足音を立てないように、そろりそろりと静かに飼育ケースに向かった。
私はまるで、「スターどっきりマル秘報告」の
「寝起きのコーナー」の田代まさしのようだった。
相手は、女性アイドルではなく、クワガタムシなのだが、夏休みの子供達のアイドルであるという、「アイドル」という点では共通であろう。
「おはようーございます」と、
私は声を小さく細くして、つぶやきながら近づいた。
そして、合鍵で鍵音がしないように侵入する田代まさしのように、音がしないように飼育ケースの蓋を取った。
真っ暗でよく見えない、飼育ケースの中からは、
「カサカサ、カサカサ」
とクワガタムシが活動している音がしている。
当たり前だが、いくら気持ちは田代まさしになりきっているといっても、
さすがに、当時の田代まさしが、アイドルの飲みかけのジュースを舐めたりするように、クワガタの食べかけの昆虫ゼリーを舐めたりはしない。念のため。
暗くて、よく見えないので、私は、「いっせいのせい」で、電気をつけた。
そりゃぁ、もう、オスがメスに一所懸命に愛を語っていらっしゃいました。
急に明るくなったことで、クワガタムシのオスは動きを止め、
メスは「キャー、恥ずかしい~」と言わんばかりに、土の中に潜っていった。
オスの方は、
「ベ、べ、別に何もしてねーぜ。
ちょっと、メスにおんぶして、おしゃべりしただけだぜ」と、
なにかバツが悪そうに、うらめしいような感じだった。
私は、そんなクワガタムシをほほえましいと思いつつも、
君たちは、しょせん昆虫なんだから、私に遠慮することないよ、
と言ってあげたかった。
私は、再び部屋の明かりを消してあげた。
そして、少し経った頃を見計らって、また、いきなり電気をつけた。
またまた、一所懸命に愛を語っていらっしゃった。
そしてまた、メスは「キャー、恥ずかしい~」と言わんばかりに土の中へ潜っていき、
オスも「ベ、べ、別に、何もしてねーぜ」と、さっきの繰り返しになったのだが、
今度は、オスの方が
「オメー、いい加減にしろよな」
と私に言っているようだった。
と、私は田代まさしから、鈴木雅之で切り返したつもりだったが、
そんなことはクワガタムシが知る由もない。
私は、少し反省をしつつも、安堵して、電気を消し、眠りについたのだった。
つづく





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